HOME > 職員インタビュー02
幼い頃の貴重な時間の多くを保育園で過ごす子どもたち。そこは子どもたちにとって大切な成長の場です。2022年4月に開園した「マ・メール知多保育園」は、子どもたちが幸せに生きる力を育みたいという、強い想いを持って運営されています。
今回は、天野恵美子園長に、マ・メール知多保育園の理念や保育の様子、そして子どもと一緒に成長しながら働く魅力について、詳しくお話を伺いました。
お話を伺った人
マ・メール知多保育園 園長 天野恵美子さん
知多市職員を定年退職後、私立保育園副園長を経て、マ・メール知多保育園設立に参加。
開園から園長として運営に携わる。
Q1.マ・メール知多保育園は「のびる力」を尊重する、という保育理念を掲げていますが、その背景には、どんな思いがあるのでしょうか?
これから何が起こるかわからない、人生百年時代と言われる中で、子どもたちが社会の一員として幸せに生きていくための、基礎を培って欲しいと思っています。
人との良好な関係を築くために必要な、自分を肯定する力や、思いやりといった、心の能力を育てていきたいんです。
乳幼児は遊びの中で、好奇心や人との関わり方などを学んでのびていきます。そしてこの「のびる力」は、言葉を喋らない0歳児から全ての年齢の子が持っていて、一人ひとり違うもの。ですから園としては、成長に合わせた遊びの環境を整え、保育者はそれぞれののびる力を尊重していきたいと考えています。
Q2.日々の保育の中で、実際に子どもたちののびる力を感じていらっしゃいますか。
サークル会議というものがあります。なにかの問題に対して、子ども同士で意見を言い合う場を先生が設定しているんです。
あるとき4歳児クラスで、園庭に虫がいないから、「公園に虫捕りに行きたい」と言った子がいました。それに対して、虫が好きじゃない子は「行きたくない」と言う。そうしたら、「公園には花や葉っぱがあるから、虫捕りが嫌な子は草花を集めたらいい」という意見が出ました。なるほど、それなら公園への散歩に参加してもいいな、っていう風に話し合いが進んだんですよね。
4歳の子たちですよ! 多数決で公園に行くのを決めてしまうのではなく、みんなのためにどうしたらいいのかを考えられる子供の姿に、心が踊りましたね。生きるためには自己決定する力も必要だし、相手の意見も受け入れて考えていかなきゃいけない。私たちが育てていきたいと思っている力が成長しているのを見て、嬉しかったですね。
Q3.園の特徴である「環境を通した子ども主体の保育」や「育児担当制で一人ひとりに寄り添う保育」などは、どのように実現しているのでしょうか。
遊びの環境については、クラスごとの子どもたちの発達の過程や興味関心に沿って、私が毎月計画を立てています。それに合わせて先生たちが活動の内容や部屋のレイアウト、どの玩具をセッティングするかといった案を考えています。
0歳児から2歳児には育児担当制を導入し、0歳児では先生1人に対して子どもは3人。毎日のさまざまな場面で、同じ先生が同じように声がけをすると、子どもたちは生活の見通しが立つようになり、安心して過ごせます。食事などの支援においても、一人ひとりの発達に合わせて丁寧に行えるのが育児担当制のよさですね。
Q4.アレルギー対応や、連絡アプリの導入などの取り組みも特徴的ですね。
食事の材料に食物アレルギーの特定7品目を使わないので、子どもたちがみんな同じテーブルを囲めるんです。命に関わる間違いを未然に防げるため、先生たちの労務軽減にも役立っています。
連絡アプリを使うと欠席や体調の連絡が一目瞭然で行なえますし、いろんなお便りもペーパーレスで届けられるので、ご家庭、先生ともに負担が減るんです。
他に、お昼寝中の見守りには体動の停止やうつ伏せ寝を感知するセンサーを利用しています。これも子ども自身の安全を守れるとともに、先生方にとっても助かるシステムですね。
Q5.子どもの安全を守りつつ、先生方にとっても働きやすい職場環境を両立しているのですね。そんな職場での、先生方の一日の仕事の様子はどういったものなのでしょうか。
8時15分から園庭や室内の遊び環境を整え、連絡アプリを確認して、気になる内容があれば他の先生に共有する仕組みです。
子どもたちが登園してきたら健康状態をチェックし、一緒に遊び、危険がないように見守って過ごします。保育内容を可視化するため、子どもたちの笑顔や遊んでいる姿を写真や動画に撮り、アプリを通してご家庭に配信もしています。
給食のサポートをしたあとは子どもたちはお昼寝です。その間に先生達は順番に職員室に来て、ご家庭への連絡事項を入力し、その後先生自身の食事と休憩になります。
午後4時に担当の保育士が代わりますので、朝からいた先生方は集まってミーティングを行います。そこで特に大切にしているのは「ヒヤリハット」の共有です。ちょっと怪我をしそうだった、という程度の事例でも報告してもらい、みんなで状況を把握し、改善策を考えます。全員で危機管理能力を培っていくためですね。
その後は話し合いを続けたり、事務処理に当てたりしますが、午後5時半の退勤が鉄則です。疲れがたまると翌日の保育に悪影響ですし、家庭がある先生のことも考えて、常に効率の良い仕事の仕方を目指しています。
Q6.天野園長ご自身は、園の運営にどのように取り組まれているのでしょうか。
私の役目はこの園の保育の在り方を示すことです。保育計画を立てるだけでなく、保育の現場を見て、子どもが落ち着かない様子だったりとか、先生の言葉遣いが気になるな、といったときには、状況を確かめ、問題が解決できるように導きます。
また業務の効率化も常に行っています。今、何をどう改善できるか、その繰り返しですね。
Q7.以前は公務員として保育園で働いておられたそうですが、マ・メールの園長になられるまでには、どういった経緯があったのでしょうか。
定年退職したときに、保育にはゴール地点はないし、まだ保育をやりたいと感じました。それで民間の保育園の副園長になったんですが、そこは「子どもや保護者はお客様」っていうサービス業的な保育園で、私の携わりたい保育はそうじゃないって思って。
その後、マ・メールが開園すると聞いて、自分から理事長に電話しました。そうしたら保育観とか、目指すところが一緒だったんですね。私にぴったりだと思いました。
園長になりたいと思っていたわけではありませんが、理事長が私の個性を理解したうえで自由にやらせてくれると言ってくれたんです。私は、目指す保育のためにどんなことをするのか、誰かに決めてもらうのではなく、自分で考えて決めていきたいという思いがありましたので、園長をお引き受けすることにしました。
Q8.その想いは、子どもたちを育てる理念とも通じていますね。
周りの考えも聞きながら、でも人のせいにはせず、自分で決めるのが大事だっていうところが、一緒ですよね。
現場で働く先生方に関しても同じです。例えば棚の置き方一つにしても、子どもの視点に立って考えられれば、壁にくっつけておかないと子どもが倒してしまって危ないって判断できる。常に考えて、そして積み重ねていく姿勢が必要です。
Q9.その理念に共感する方にとっては、この園で働くのはとても魅力的なことでしょうね。
スキルや経験がなくて不安だという方もいらっしゃるんですが、続けていただければ、子ども自身が伸びていくのを目の当たりにするときがあります。それは保育者にとって大きな喜びです。子どもたちの成長する様子は、先生たちがいつもニコニコしながら話してくれますね。
子どもたちは日々変化するので、それによって環境や仕事の仕方も変えていきます。子どもたちに沿って、自分も柔軟に変化できる人、自分で考えながら子どもと一緒に成長して楽しめる人には、いい職場だと思います。
Q10.最後に、これから働いてみたいという方にお伝えしたいことはありますか。
最初からうまくできなくていいんです。できなくて当たり前。ですから複数担任制で、新しい先生はベテランの先生とペアになります。1人で抱え込むことなく、教えてもらい、相談しながら働けます。
これは新しい先生にとっても安心できる環境ですし、子どもたちにとってもいい環境です。子どもと一緒に自分自身も成長したい、という方に、ぜひ来ていただきたいですね。
(取材・編集 / エドゥカーレ)
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